前回の記事では、ライザップの糖質制限ダイエットの基本的な仕組みについてお話しました。
タンパク質は本来身体の材料となるものですが、人間の主要なエネルギー源である糖質が不足した場合は、タンパク質から糖新生を行ってエネルギーを作り出します。
しかし、それは糖質に比べれば効率の悪いエネルギー源であるため、タンパク質をたくさん食べても太りにくいという事でした。
今回は、それに加えて、もうひとつ「タンパク質は太りにくい」と言われる理由について解説します。
キーワードは「食事誘発性熱産生」です。
食事誘発性熱産生(DIT)とは
食事誘発性熱産生は、食事誘発性熱代謝とも呼ばれ、簡単に言うと「食事によって発生する体熱」の事です。
ラーメンやステーキを食べている時に、身体がポカポカと暑くなって汗が止まらなくなった経験は誰にでもあると思います。
あれは、単に熱いものを食べたから身体も温まった訳ではなく、身体の内側から熱が発生しているためです。
口から入った食べ物は、胃で消化された後に腸に移動して分解、吸収されていきます。
この時、食物の分解・吸収を行うのは数百種類にも及ぶ「消化酵素」です。
この消化酵素は、37~38度の温度で最も活発に働くようになると言われています。
人間の腸内の温度は、通常36~37度程度に保たれているので、酵素の働きを活性化するには、もうひといき温度を上げる必要があります。
このため、食事によって腸内にものが入ってくると、その栄養から得たカロリーを消費して熱を発生させ、腸内の温度を上げて酵素の働きを活性化しようとするのです。
これは”褐色脂肪細胞”と呼ばれる脂肪細胞や、筋肉の発熱によって行われています。
このように、人間の体には、食事によって熱を生みだして体温を上げる機能が備わっているのです。
こうして、食事によって熱が生み出されることを「食事誘発性熱産生(DIT)」と言います。
タンパク質はDITが高い
食事によって生み出されるDITは、食事の内容によって変わってきます。
食事誘発性熱産生は、消化酵素の働きを活性化して消化を促すためのものですから「消化しにくいものほどDITが高い」と考えられています。
つまり、消化しやすい流動食ではDITは上がりません。
また、食べ物をよく噛まずに飲み込んだりしても、身体が「食事をしている」と反応するのが遅れるため、DITが上がらないと言われています。
前回の記事でも紹介したように、タンパク質は糖質や脂質に比べて分解の手間が多く、消化に時間がかかります。
このため、肉類は「腹持ちがいい」と言われるのです。
タンパク質、糖質、脂質には当然カロリーがありますが、そのカロリーの一部は食べた瞬間にDITとして消費されてしまいます。
その割合は、糖質4%、脂質6%、タンパク質30%と言われています。
もちろん、通常の食事はこれらの混合なので、全くこの通りになることはありません。
しかし、それにしてもタンパク質のDITの高さは際立っています。
このため、ライザップでは普段の食事の糖質を減らし、タンパク質を沢山食べることで、DITを高めて消費カロリーを増やす手法をとっています。
このため、肉類をお腹いっぱい食べでも、実際にエネルギーとして摂取したカロリーは「意外と少ない」という事になるのですね。